2011年11月15日火曜日

週末にはイタリアのベルルスコーニ首相がイタリア下院の財政安定法案可決を受けて辞任、
(過半数を獲得出来なかったため)新首相にモンティ元欧州委員が指名された、という
恐らくはポジティヴに捉えられるであろうニュースと、
アメリカ、アラバマ州ジェファーソン郡が米連邦破産法9条の適用を申請し財政破綻となった
というネガティブなニュースが出てきて
週明けのMarketはどちらに引っ張られるかな?と注視していましたけれど、
どちらもそれほどの材料にはなっていないようです。

Marketは若干のギャップアップ(リスクオン気味)でスタートした後
だらだらと水準を引き下げるというやる気のない反応で、
どちらかを材料にしたような動きには見えませんでした。

先ずイタリアの新首相となったモンティ氏。
経済学者で、欧州委員では競争政策を担当。GEやマイクロソフトなどの大型買収案件に
モノ申したことで知られています。M&Aに絡む強大なロビー圧力にも屈しなかったとか。
欧州委員として最も高く評価された1人だそうで、ベルルスコーニ氏よりは
大いに期待が持てるわけですが、首相が変わったくらいのことで問題が解決する
わけではありません。
これを好感してMarketがドカンと上昇することはありませんでした。

イタリアの債務問題が解決できなければ仏の銀行に懸念が拡大します。
仏の銀行はイタリア向け与信が4102億ドルと突出しています。
つまり、イタリアの問題はフランスの問題です。
こんな神経質な状況にある中の10日、米格付け大手スタンダード&プアーズが
フランス国債の格付けを引き下げたとする文書を一部顧客に誤って配信したなんて
トンデモない事件も勃発しており、穏やかではありません。
(後にウェブサイトの改変に伴う技術的ミスだったと発表していますが、
 それにしてもその内容。冗談で作成された文書なら相当不謹慎ですが、
 タイミングを見計らって出すつもりの予定稿なのでは・・・などと邪推してしまいます)

仮にフランスが格下げされれば救済基金であるEFSFの格付けにも
影響が及びます。となると高債務国への融資能力も低下してしまいます・・・。
EFSFによる融資ってユーロ加盟国の中のAAA保有国による保証が必要で、
これが27カ国中、現在わずか6カ国しかないんです。
ドイツ、フランス、オランダ、オーストリア、フェィンランド、ルクセンブルグ。
このうちフランスは全体の20.38%(およそ5分の一)相当の拠出を保証しており、
フランスが格下げされると他の5カ国の負担が増加し、EFSFが機能しない?なんてことにも。
このリスク、実は相当リアリティのあるシナリオなんじゃないかと思っていますが、
格付会社もフランス格下げ発金融危機のトリガーとなるようなことはしないか・・・?!

それからアラバマ州ジェファーソン郡の財政破綻。
負債総額は約40億ドルを超えており
1994年12月のカリフォルニア州オレンジ郡(17億ドル)を
上回る過去最大の地方政府の破綻劇。
最大の債権者はJPモルガン・チェースだとかで、金融機関にとってのネガティブ材料。
ちょっとこうしたアメリカの地方都市の財政状況に関する詳細がよくわからないので
なんとも言えないのですが、こうした破綻が連鎖するようだとドルの信任低下につながり
リスク回避相場となるんじゃないかと思います。
今日思ったより冷静な反応なのがちょっと不思議です。

それから今月の最大の山場はもしかしてアメリカがテーマかもーって話。
8月のドタバタ劇の再来です。
米政府・議会は8月、法律で定められた政府債務の上限を
従来の14.3兆ドルから2.1兆ドル引き上げましたが
これがギリギリまで承認されずにアメリカのデフォルトか?とMarketが大波乱、
大暴落を招きました。承認にはこぎつけたのですが。
(予想通りな展開ですが、Marketは異常なほどに反応して動きましたよね)

そしてこの問題、債務上限が引き上げられただけで安心してはいけないんですね・・・。
この債務引き上げ法案には超党派の委員会を設置して、
今後10年間で1.2兆ドルの赤字削減案をまとめることが明記されています。
その重要な赤字削減策をまとめる超党派協議の期限が今月23日に迫っているのです。
そしてこの赤字削減策も、来年の大統領選をにらんで駆け引きが加熱すると見られています。
つまり、ギリギリまで合意しない可能性が。

仮に委員会が合意に至らない場合、
国防費や社会保障費など1.2兆ドル相当の歳出を自動的に削減する措置が
発動されます。来年2013年から。
この措置があることで合意できなかったとしても
米国債がすぐに格下げされることはないと
見られていますが、脳裏をよぎるのは8月の再来。
ドル売りの嵐ですね。

また合意に至ったとしても、これが決してドル買いの材料ではありません。
緊縮財政下で米景気が回復していくシナリオが描き難いためです。
バランスシート調整のために財政出動に制限があるとなると、
FEDによる追加緩和策への期待が織り込まれる可能性が出てくるため、
これまたドル売りと・・・・。

ここからは欧州問題もイタリアからフランスへ?と悪材料払拭できずユーロ売り心理が働き、
アメリカも赤字削減策のドタバタ劇再来でドル売り心理が働くといった駆け引きで
どちらに軍配が上がるのかに賭けるような相場になりそう。

最後に日本の介入について。
IMFのラガルド専務理事が日本の為替介入について
「G7声明に沿ったもの」と認識していると述べました。
「われわれは、介入の最も効果的な方法は協調行動だと考えている」と
付け加えたとはいえ、意地悪だった「聞いてないよトリシェ発言」に
比べれば温かい言葉で?!介入容認とも受け止められたようです。

というのも、11日安住財務相が
3月の東日本大震災後の為替介入は、欧米の理解を得て協調で実施したが
その後は残念ながら(欧米と)同じ認識に立てなかったなどと話ており、
もう介入はないんじゃないか、なんて思惑が広がりドル円が崩れてきたという
流れがあったためにこのラガルドさんの発言はちょっと意外だったんですよね。
それにしても安住さん、
正直に言わなくてもいいこともあるんじゃないかなーと思ったり・・・。

つまり、先週の安住さんの発言に介入警戒が薄れていましたが
まだまだ介入が入る可能性は十分にあるってこと。
ドル円は下がったら買いかもしれません。これはドル円に限って。

そして23日にむけてはドル売り戦略。ユーロ買いってことになっちゃうけれど。
 

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