2011年6月25日土曜日

昨晩大騒ぎとなったニュースに
「IEA石油備蓄放出」があります。

為替取引をしている皆さんには一見関係の薄いニュースのような気がしますよね。
しかし、私はこのニュースが今後のマクロマーケットを占う上で大きな
撹乱要因となるに違いないと思っております。

原油の供給能力は限界近くに達しているとも言われ、ピークオイル説を
唱える向きもあるのは事実ですが、実際には原油の在庫は余剰気味。
需給はだぶついており、原油価格は下落傾向にありました。

しかしながら高値が続く原油価格が景気に悪影響としてIEAは
OPECに増産を要請していました。
しかし先般(8日の)OPEC総会で増産合意が得られませんでした。
反対したのはイランやベネズエラといった反米国であり、
増産余力がもともと無い国が増産要請に反対したわけです。
彼らは目いっぱい原油を生産して高値で売って外貨を稼ぎたいのです。
アメリカのことなどどうでもいいんですよね、多分。

このOPECの物別れというのは過去20年なかった異例のこと。
IEAもこれに業を煮やしたであろうことは推測できます。

しかし、その後アメリカからの強い要請があったのか?
サウジアラビアやクゥェートは独自に増産を表明、
結局は「OPECでの合意はなくとも増産に踏み切った」わけで
これといって現在の需給が逼迫している状況にはありませんでした。


IEAの石油備蓄放出は湾岸戦争時とハリケーン・カトリーナの時と
過去2回実施されました。
この時は実際に需給が逼迫し、原油価格に多大な影響があるということでの
放出でしたが、今回は先進国の景気低迷で需要は減退しており、
在庫はだぶついており、価格も緩やかに下落していたのですから、
状況がまるで異なります。

つまり今回の石油備蓄放出は「価格操作介入」に等しいのです。

*200万バレルを30日間放出とのこと、
これは1日の世界の原油需要の2.3%を
毎日放出し続けるということで相当なボリュームです。

90ドル台にあった原油価格をさらに下げさせたい、その理由は?!
過去には147ドル台もありました。今年も115ドル台がありました。
今回は100ドルを割り込んだ水準でのこの発表です・・・。

「アメリカの景気梃入れ」

これしか考えられません。

まもなくQE2が終了します。
市場は今ふたつの7を懸念しているといいます。
ギリシャの頭文字「G」はアルファベットの7番目。
そしてQE2が終了した後の7月の相場が読めない・・・・

先日のFOMCではQE3への具体的言及はありませんでした。
(一部メディアはQE3に含みと報道していましたが・・)

バランスシートを考慮すればこれ以上の資金拠出は無理だといわれています。
それなのに、株価は下落を続け、指標も冴えない・・・ギリシャ問題も
世界景気への不安要因です。

Fedはもう手の打ちようがないのは明白。
ならば原油価格を下げさせて米国景気の浮揚を図ろう・・・・

こういう「ウルトラC」戦術なのではないだろうか。

※アメリカはガソリン社会。
1ガロン3ドルを超えると消費が鈍ると言われているのですが
 先般1ガロン4ドルに到達。これは2008年のリーマン前の
原油140ドル台の頃の水準です。
これがこのところの米景気を減退させている要因との指摘もあるのです。

もし、そうであるならば
こんな苦肉の策を講じなければアメリカの景気は持たない。ということを
認めたということ。
少なくとも、この原油在庫が余剰気味で価格が下落傾向にある中で
様子見が出来ずにこのような発表をせざるを得ないという
崖っぷちの状況にあるということなのではないか・・・・(個人的推測ですが)

このボリュームの石油備蓄放出となれば
素直に原油売り、米株(ダウ)買いとなるはずです。
昨晩はそういう反応となりましたね。原油は下落し、
ダウは一時大きく下げたものの、引け際にはほぼ前戻しで終わっています。

しかし・・・今夜はどうでしょう。
ダウも下げているじゃないですか。
原油は下げるでしょう。需給でいえば下がるしかない材料です。
ところが株が上げないということは・・・

今回の「オイルの専門家ですら頭を捻って訝しがっている」備蓄放出発表は
裏が色々ありそうです。

今日のラジオNIKKEIマーケットトレンドでもオイルエコノミストの藤澤治さんが
「寝耳に水」と表現していました。理解できないと。
大統領選挙に向けての戦略か?
この発表にOPECが不信感を抱いているが、OPECが減産に踏み切ることはないのか。
IEAが備蓄放出、OPECが減産なんてちぐはぐなことが起こりうるのか?

オンデマンド放送で専門家の解説を聞いてみてください☞ コチラ

これはマクロマーケットにとって大きなニュースです。
原油が暴落し株価が大きく戻る。。。
果たしてそんな簡単にIEAが望むような展開になるだろうか。
マーケットはそんなに簡単にハンドリングできるものではありません。
裏読みすればこれ以外に策がないことを露呈してしまったということかも。

さて今後このニュースがどのような波紋をもたらすのか。。。。

私は原油も下がるでしょうけれど、株価も下がると思っています。
逃げた資金は金市場へ。
為替は・・・・んーー難しい。これはもう少し煮詰め手みたいと思います。

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