2016年4月17日日曜日

熊本の大地震、そして14~15日のG20、17日のドーハでの産油国会合など、
この週末から来週週明けには、様々なニュースが出てきています。

地震の影響

日本が被災すると復興に向けて保険会社の保険の支払いが嵩むことから、
保険会社が海外資産を処分しキャッシュ化して日本に資金を戻すという
レパトリエーションが起こるとの思惑が広がります。

2011年のNZ地震の時はNZドルは売られました。
NZに投資されていた資金が地震の被害をみて流出したと見られますが、
日本の場合は、海外に投資している世界一の対外純資産国
(366兆もの海外資産保有。24年連続世界一)であるため、
これが戻ってくるという思惑が強まるため、円高になってしまうのです。
もちろん全てではないですよ、被害補てんのために円が必要になる部分と
いう意味での本国回帰マネーが巨額になろう、という思惑にすぎません。

NZは高金利通貨であるため、海外からの投資が大きいことから
災害では売られるのですが、日本はレパトリ思惑が大きい。

東日本大震災の時は津波の被害も甚大だったため、
強烈な円高圧力が働きました。市場の過度な円高進行を受けて
G7が10年半ぶり協調介入を実施し円高阻止へ動いたという経緯がありました。

実際の保険の支払額がどのくらいになるかは
地震直後には想像もつかないだけでなく、実際に支払い需要が起こるわけでは
ありません。ですから地震直後に急激に円高が進むという値動きは
実際にレパトリが起きて円が買われているのではなく、
これからそうした円買いが出てくるという思惑で、先回りして
投機筋らが仕掛けてくることによる値動きの影響のほうが大きいと思われます。

問題は、今回もそのような仕掛け的な円買いが起きるリスクが
否定できないということです。

不協和音に終わったG20


14~15日のG20財務相・中央銀行総裁会議では、通貨安競争を回避することを
確認するという合意が出るだろう、とは予測されていましたが、
なんとルー米財務長官が円売り介入をけん制したようです。

このところ官邸主導で為替政策が行われている、との指摘が出てきており、
急激な円高では介入も辞さないというような趣旨の発言を
麻生財務大臣が行ったことで、あまりに過度な投機的円買いがあれば
介入の可能性もあると受け止めた海外勢による円買いが沈静化した、
との見方もあったのですが、、、。官邸主導ということは、介入をにおわす発言も
米国と連携しながら承認を得ているはずだ、ということです。

ところが、15日夕、米財務省がワシントン市内に設けた記者会見で
ルー米財務長官は突然、円相場に触れ
「日本は外需ではなく内需に目を向ける必要がある」
「最近は円高が進んでいるが、市場の動きは秩序的(orderly)だ」。
とコメント。
ルー氏の15日のコメントは、実は「為替相場は秩序的」だけの予定だったと
日経は伝えています。そこに「円高が進んでいるものの」と
アドリブで付け加えて牽制したとみられるのです。

日本の通貨当局が慎重に瀬踏みしてきた目先の円売り介入案が
砕けた瞬間だった。・・・・と日経新聞。

日米、為替政策めぐり舌戦 G20会議で見えた亀裂
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO99749060W6A410C1NN1000/


落ち着きつつあった海外投機筋の円買いが強まりやすくなるのではないか?
このG20受けてのルー財務長官のコメントで日本が介入できないと
足下を見られれば、再び投機筋が仕掛けてくる可能性が…。

ただし、ルー財務長官のこの会見はタイミング的に
熊本地震を考慮していないと思われます。
熊本地震の状況を把握していれば、わざわざアドリブで日本の介入牽制を
することはなかったでしょう。むしろ、地震が起こったことで
このコメントを過度に恐れることはなくなったと言えるかもしれません。

米国は大統領選を意識して通貨政策に神経質になっている側面があるようですが
このような大地震で苦しむ日本をあえて陥れるような事はないと思います。

ですから、週明けから過度に円買いをしてくる向きがあるようなら
日本は介入も辞さない姿勢であることには変化なし、という判断で
良いかと思います。米国も了承するでしょう。

ただし、それ程スピードがなく、だらだら下がっていくような場合は
介入もやりにくいと思われ、どの水準が日本が許容できないラインなのか、
介入してくる水準はどこなのかを見極めるのは難しいですね。

105円くらいまでの円高はあっても、介入はできない気がします。
105円を割り込んで100円に迫ろうという水準があれば、
その可能性も出てくるかとは思いますが…。

株式市場は大丈夫か

サプライチェーンリスクも気がかりです。
九州って製造業の工場が多いんですね。

熊本地震、トヨタが生産停止を拡大 電機も復旧に遅れ
http://jp.reuters.com/article/wrap-quake-plant-idJPKCN0XE0GN

その他に熊本県に工場がある銘柄として
ホンダ<7267>、ブリヂストン<5108>、富士フイルム<4901>、
三菱電機<6503>、ソニー<6758>、パナソニック<6752>、
オムロン<6645>、ルネサス<6723>などがありますが、

トヨタやホンダなどの自動車、そしてその部品工場が多いとなると
しばらく株価は軟調となると思われ、これが日経平均の上値を抑える
リスクとなってくる可能性もあります。

株価が落ちればドル円も落ちるだろうと考えられます。

週明けの株式市場の反応はどうでるか。

こういう時は内需関連銘柄が強くなるのですが、インデックスを
支えるような上昇があるかどうかに注目です。
 
増産凍結で合意、産油国の17日ドーハ会合

悪いニュースばかりのようですが、原油価格はサポートされそうです。

主要産油国のドーハ会合、10月まで増産凍結で合意へ=草案
http://jp.reuters.com/article/oil-meeting-draft-idJPKCN0XE048

現時点では草案内容で合意が確認されているという段階ですが
恐らく合意で閉幕となるのでしょう。
イランが参加していなかったら意味がないという指摘もありましたが、
イランが参加しなくても、彼らの生産能力は長期経済制裁の影響で
それ程高くなく、制裁前の水準まで増産できるのはかなり時間がかかると
見られており、それほどイランを目の敵にして懸念せずとも心配ないようです。

足並み揃わず合意できないと予想する向きもあったため、
素直に合意は原油価格上昇の材料だと思います。
その遵守率については別の話ですが、、、

原油が上がれば、米株、豪ドルなどの資源関連通貨などは
リスクオン、買われるでしょうから、
これが日本株も支えてくれればいいのですが。。。

少なくともオイルマネーによる日本株売り(換金売り)が
止まってくれれば、本邦年金、機関投資家が株式市場にはいってくる
時期となりますので、下がらないと思われます。

原油上昇で、海外勢の売りが止まればまだまだアベノミクスが終わった、
と見るのは時期尚早かと思っています。

また、大きな災害があったことで消費増税見送りが決断しやすくなった、
あるいは大型の補正予算を打ち出しやすくなった、という見方も出ると思われ
これらも市場をサポートするかもしれません。

ポジションですが、地震があった後に、、ドル円と豪ドル円ロングは
手仕舞いました。残っているのは豪ドルドルとキウイドルロング。
ストレート通貨のロングのみです。

熊本、九州地方の1日も早い復興を願っています。

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