2022年3月14日月曜日

 1・ドル円急騰、ドル買い/円売りの背景
2・今週は中銀ウィーク
  FOMC注目は「米中立金利」とドットチャート
3・RBAハト派スタンス継続するのか?副議長辞任で混乱も
4・BOE、3回目利上げ予想もポンド安
5・原油高、UAEの増産要請とベネズエラの存在
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1・ドル円急伸、有事でも円買いにならず117円台へ

その背景として
①米金利はFOMCにむけて上昇基調、ドル買いへ
 米金利については2項で書きます。

②日本は緩和継続姿勢崩さず、円売りへ

・今週日銀金融決定会合ですが政策に変更はないと思われます。
 これは11日先週金曜の記事。
経済・物価情勢踏まえると、金融緩和修正する状況にない=日銀局長
https://jp.reuters.com/article/japan-economy-boj-idJPKCN2L80A3
・賃金上昇など物価高の2次的な波及が懸念されない限り、
 金融引き締めで対応するのは適切でない

米国は物価高に加えて労働市場での賃金上昇で
人材確保にも窮する事態ですが日本の賃金は・・・・。

③資源高で資源のない日本の貿易赤字拡大、今週16日に2月分発表

1月は日本の正月や中国の春節の影響があり
日本の輸出量が減少することで貿易赤字は拡大するパターンがあります。
しかし、それを鑑みたとしても今年1月の貿易赤字の規模は衝撃でした。

巨額貿易赤字、円安材料になる日は来るのか
https://jp.reuters.com/article/column-tamaki-kazuhiko-idJPKBN2KM0HC
・1月の日本の貿易収支が2兆1911億円の赤字と過去2番目の大きさ
 ~この基調が続けば、2022年に10兆円規模の赤字を記録する可能性も

・この10年間で10兆円台の赤字を記録したのは、
 2014年の12兆8160億円:13年の11兆4683億円の2回。
・2012年から2021年までの10年間のうち、7年は貿易赤字を記録

さて、この貿易赤字、2月は縮小していていればいいのですが
同規模~赤字拡大となっていれば円売りは継続するとみていいでしょう。

原油やガスなど高騰した資源を買うために
日本はドル買いをしなくてはいけないのです。

2・今週15~16日FOMC会合

FOMC、金利軌道に慎重とエコノミスト-不透明感増す中で会合へ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-11/R8KZRYT0AFBO01

すでにFRBパウエル議長は議会証言において今会合での0.25%利上げ実施が
適切との方針を示していますので、これを変える実施がない限りは
波乱はないと考えられますが
ロシアによるウクライナ侵攻によって不確実性が高まっていることから
「幾分か、より慎重でハト派的な姿勢を取る公算が大きい」と見る向きもあり
FRBがどれほどタカ派スタンスを維持するのか、という点が注目になりそうです。

ただ、ウクライナ、ロシアの有事は欧州とは異なり
米国の労働市場に直接打撃となるとは考えにくいだけでなく
インフレの加速リスクはより高まったわけですから、
タカ派スタンスを緩めるということはないようにも思っています。

ただ、23年、24年のドットチャートがどこまで引き上がるは重要。
インフレ見通しは引き上げられそうですし、、、
FRB内では政策金利を中立を上回るまで水準を引き上げることが適当
との見方が出ていますよね。
中立金利というのは「景気・物価を過熱も冷やしもしない実質金利」のことで
昨年12月時点のFOMCメンバー予測中央値の中立金利は2.5%前後。

ということで
24年のドットチャートが2.5%を超えてくると
今回の会合が、よりタカ派となった、と市場が受け止める可能性があります。

その場合はドル高が加速するかも。。。

シカゴ連銀総裁、年末までに2%付近と言及-最大7回の利上げ示唆
https://news.yahoo.co.jp/articles/9a974fbd743362dfc2d02612f1ed9b6f8f8fe01b

メスター総裁、インフレが根強く続けば利上げ加速が必要
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c3857f425f9f59cbc4ca998c994b0ccf448cc14
・金利が2.5%程度の中立金利を超えることは十分にあり得る

ウクライナ有事で一度低下していた米債券金利、
FOMCに向けて上昇していますが、これが更に上昇するのか、
利上げ確認後事実で売りの展開となり金利上昇がとまるのか。
これがドル円上昇が継続するか反落するのかを占うのではないかと見ています。

※米債券利回り一覧 短期から長期ゾーンまで軒並み上昇基調に

3・RBAハト派継続か?~副総裁電撃辞任で混乱も


Australian Dollar: RBA's Lowe Refuses to Budge on Interest Rate Guidance
https://www.poundsterlinglive.com/aud/16663-australian-dollar-rba-s-lowe-refuses-to-budge-on-interest-rate-guidance
・ロウ総裁は3月9日に開催された講演で
 RBAは利上げに「忍耐強くなれる」と述べた。
・早すぎる利上げは「ここ数十年の失業率よりも低い失業率を確保する機会」を
 危険にさらす可能性がある」
 
記事中にもありますがこのところの豪ドル高は
紛争から地理的に離れていることとと豪州の豊富な資源輸出バスケットのおかげで、
投資家は豪ドルを好んでいた~とありますが
さらには
「金融市場では現在、2022年のRBAの利上げ幅を125bpと見積もっており、
ロウやRBAの現在のガイダンスをはるかに上回っている。」点には注意が必要か。

「地政学的リスクが高まったままであれば、貿易条件の改善と
米国金利の低下による相対金利の組み合わせにより、
豪ドルの強さが持続する可能性がある」とも。

■Australian dollar marches higher despite dovish RBA(3/10)
https://capital.com/aussie-keeps-marching-higher

市場は現在、RBAが6月まで金利の引き上げを開始しないと予想
ロウ総裁は2日、(利上げが)「早すぎる動きのリスク」もあると述べています。
労働市場も重要だ、指摘しているのです。

ANZのアナリストは「今回の総裁の発言は、
金利の引き上げが市場の予想よりも遅くなることを示唆している」と指摘。
「最初の利上げは第2四半期ではなく、第3四半期に行われると考えられる。」

■Shock Departure of RBA No. 2 Debelle Spurs Debate on Successor
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-03-11/shock-departure-of-rba-no-2-debelle-spurs-debate-on-successor
・RBA No.2ディベル氏の衝撃的な退任で、後任をめぐる議論が活発化
・フォーテスキュー・フューチャー・インダストリーズの最高財務責任者に就任
 するため、3月16日に退任する予定(再生可能エネルギー企業)
 ~デベル氏は2026年9月に任期を終える予定だった。

RBAの副議長が任期途中で辞任するようです。
デベル氏はフィリップ・ロウ氏の後任としてRBA総裁に就任する
最有力候補だと考えられていたようですが、、、
ロウ総裁の任期は23年9月まで。

4・BOE、継続利上げ見込みも売られる英ポンド

Bank of England heads for third rate rise in a row as prices surge

https://www.reuters.com/world/uk/bank-england-heads-third-rate-rise-row-prices-surge-2022-03-11/
・BoEは17日に0.75%へ利上げする見通し(3回目)
・ウクライナ侵攻で短期的なインフレ波動が強まる
 ~インフレの劇的な高騰を抑制
・エコノミストらは、インフレ率は今年後半に8%を超え、
 1980年代前半以来の高水準に達する予想
・市場は2022年末までに金利を2%に引き上げる可能性を予想も
 
BOE英国中央銀行は21年12月に0.25%の最初の利上げを実施。
2月に2回目。そして今度が3回目。

3度目の利上げが見込まれているというのに
何故にポンドがこんなに売られているのだろう、と不思議に思っていましたが
貿易統計を見て(゚ロ゚)wびっくり、貿易赤字のせいか。

英貿易赤字は1月に219億ポンド(286億ドル)と
12月の147億ポンドから拡大し、過去最大へ。
ブレグジット後に対EU貿易に関するデータの収集方法が変更されたことが
影響しているようです。
ブレグジットの影響でEU向け輸出の事務処理で困難を経験する業者が増え
これは貿易に大きな影響を及ぼしている模様。
EU輸出分の幾分かの商品が遅れて記録される状況にあるようで
これは2月の数字で修正される見込み、とか。

それにしてもです。

※英国 貿易収支 次回は4月11日に発表されます。
■ポジション
ユーロドル 1.1073ドルS継続
EURAUD1.5052ドルS継続

BOEが利上げの利上げでポンド高となる局面があるかどうかわかりませんが
ポンドが戻るようなら売ってみたいですね。

5・原油高は収束にむかうのか?
米、ベネズエラ産原油の直接供給要求 禁輸緩和巡る交渉で=関係筋
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-venezuela-usa-idJPKBN2L607I
・米政府高官は5日にベネズエラの首都カラカスを訪れ、マドゥロ大統領らと会談
~5日の2国間協議で進展はほとんど見られず、双方は協議継続で合意
(19年トランプ政権がベネズエラ産原油の禁輸措置を発動)

2018年実績で、ベネズエラは日量150万バレルの原油を世界に輸出。
米国はこのうち日量約20万バレルのベネズエラ産原油を輸入していました。
現在の生産量はPECの報告書によると、1月で約日量66万8000バレル程度。

米国は日量24.5万バレル程度のロシア産原油を輸入していました。
ベネズエラからこの分を補填しようとバイデン政権が動いているということですが
原油生産には継続した設備投資が必要ですので
急にこの全てを生産できる能力があるとは思えません。

1998年は日量350万バレルへの生産に戻すには、
2500億ドルの投資と7〜8年の歳月が必要とベネズエラの経済学者。

Venezuela’s Devastated Oil Industry Is In No Condition To Replace Russian Production
https://www.forbes.com/sites/mariaabreu/2022/03/08/venezuelas-devastated-oil-industry-is-in-no-condition-to-replace-russian-production/?sh=8827206601e9

ベネズエラ・マドゥロ政権としては制裁解除してほしいという思いも強いようですが
ウクライナ侵攻の直後にロシアへの支援を表明しており
米国内にはベネズエラに歩み寄るバイデン政権への批判もあり
容易い交渉ではないと思われます。

ただ、先週はUAEが増産に前向きなスタンスを表明している他、
今週18日金曜は米国メジャーSQはとあって
原油市場が高値追いを続ける地合いにはないと思います。
中長期ではまた上昇する可能性は十分にありますが。

**********今週の主な予定***********
14日(月)
ユーロ圏財務相会合

15日(火)
中国小売売上高・鉱工業生産(1-2月合算分)
ドイツZEW景況感指数(3月)
米生産者物価指数(2月)
EU財務相理事会
OPEC月報

16日(水)
★日本 2月の貿易統計
米小売売上高(2月)
ドイツ10年債入札
米FOMC

NATO臨時国防相会合

17日(木)
NZ GDP(第4四半期)
豪雇用統計(2月)
トルコ中銀政策金利
英中銀政策金利、ベイリー英中銀総裁記者会見
ラガルドECB総裁、講演

18日(金)
日銀金融政策決定会合、黒田日銀総裁記者会見
日本消費者物価指数(2月)
ロシア中銀政策金利

先週のひろこのWeeklyGOLDは
<ロシア経済制裁と外貨準備>
『貴金属暴騰!ロシアとゴールド』
https://youtu.be/aVhGz24vloE
・ニッケル急騰の舞台裏
・GOLD上昇とロシアの外貨準備
・ロシア、金の付加価値税撤廃は金本位制に???
・ロシア生産世界一のパラジウム急騰でプラチナに注目のワケ
貴金属スペシャリスト池水雄一氏に伺いました。



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