2022年8月29日月曜日

 1・パウエル議長講演、市場の楽観に冷水
2・ECB、9月の大幅利上げ高官ら相次ぎ主張
3・オーストラリア LNG輸出規制を検討
4・黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない

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1・パウエル議長講演、市場の楽観に冷水

パウエル議長、高金利維持する可能性高いと示唆-転換期待裏切る
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH86WMT0AFB401
パウエル議長、23年の利下げ観測に「明確な抵抗」-市場関係者の見方
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH8B2CT1UM1001

振り返れば昨年21年のジャクソンホール会合では
「インフレは一時的」だとしていたパウエル議長、
今年は、短期的に経済に痛みを強いてでもインフレが抑制されるまで
金利をしばらく高い水準で維持する必要があるとの見解を示しました。

わずか10分程度の短い講演でしたが、
市場の反応はドラスティックなものに。
楽観が支配し始めていた株式市場は大きく崩れました。

※米主要株価インデックス一覧 やはり200SMAは重要ね
ダウ    32,283.40  ▼1,008.38
SP500    4,057.66 ▼141.46    -
ナスダック   12,141.71 ▼497.56   

以下、各連銀総裁のコメント。

◆クリーブランド:メスター連銀総裁
「来年の早い段階で4%超に利上げ後は据え置きを」

◆アトランタ:ボスティック連銀総裁
「長期間、高水準での政策金利を維持すべき」
「最大の懸念は労働市場ではなくインフレ」
「景気抑制」な政策金利のレンジは3.5-3.75%」

◆セントルイス:ブラード連銀総裁
「政策金利年末までに3.75-4%に達するのが望ましい」

◆フィラデルフィア:ハーカー連銀総裁
「政策金利を年末までに少なくとも3.4%に引き上げた後、
 利上げをいったん停止し、経済がどう反応するかを見極めるべき」
「金利をどんどん上げ続け、その後で極めて急速に引き下げる必要はない」
「景気抑制的な金利水準については3.4-3.5%付近」

6月FOMC時点では
年末までにFFレート金利3.4%引き上げがコンセンサスでしたが
今では 4%という数字がFRB要人らから出てきていますし
パウエル議長が経済成長鈍化の痛みを伴ってでもインフレ抑制が最重要で
金利を高い水準に維持する必要があると明言しているのですから
市場金利(FFレートを最も敏感に映す米2年債金利)は
早晩4%を目指すものと考えられます。

※米短期債利回り 現在3.4%
1990年代は常に4%を超える金利だったことを考えれば
40年来のインフレ到来ですので、4%まで上がったって全く不思議はありません。

※FedWatch金利先物市場は26日金曜時点で
 12月FOMCでの4%到達を40.9% 
 1月FOMCでの4%到達を41.9%まで織り込んでおり、
 3月時点になると 4.25%を21.2%織り込んでいます。

現時点でのメインシナリオは早期4%到達で、その後は様子見って感じね。

ただし、インフレ高進は止まっており、インフレはピークアウトした
というのが市場のコンセンサスとなっており
市場の来年後半の利下げ期待は完全に払拭されていません。

26日発表された7月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、
前年同月比6.3%上昇と、前月の6.8%から伸びが鈍化。
先週発表された7月の消費者物価指数(CPI)も
前年同月比8.5%上昇と、伸びは約40年ぶりの伸びとなった
6月の9.1%から鈍化していましたね。

インフレの低下が著しい、あるいは再び大きく上昇していくような場合は、
こうしたコンセンサスが再び大きく変化しますので、
あくまで現時点では、という話です。

さて、パウエル議長の講演受けて米ドルが上昇する直前までは
26日金曜のマーケットではユーロが急騰していました。

2・9月の大幅利上げ、ECB高官が相次ぎ主張

ECB9月政策委、最大75bpの利上げ決定を支持-オランダ中銀総裁
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-27/RH8U25T1UM0W01?srnd=cojp-v2
ECBの政策委員会メンバー、クノット・オランダ中銀総裁、
「9月の次回の政策委員会で最大0.75ポイントの利上げ決定を支持する」

この26日金曜のクノット・オランダ中銀総裁の発言の後も
27日にはシュナーベル専務理事、ビルロワドガロー仏中銀総裁、
カザークス・ラトビア中銀総裁が大幅な利上げの必要性をそれぞれ主張しています。

ECBは先月、11年ぶりの利上げを決定。
政策金利を0.5%に引き上げました。
次回9月8日の理事会では0.75%引き上げ、1.25%に引き上げられるか?
という話ですが、エコノミストが1.5%付近と予想する中立金利について、
ビルロワドガロー氏は年内に到達すると発言。
カザークス氏は来年第1・四半期に到達するとの見方を示しているます。

しかし、その頃には米国の金利は3.5~4%に引き上げられている見込みで
ECBが今から利上げを急いでも米国には追いつけません。

というわけで、コレまでのドル高の揺り戻しはあっても
ドルよりユーロのほうが強くなるというトレンドの発声は見込めませんので
ユーロ上昇があっても一時的かとは思います。

この世界の利上げシフト、
最終的にどうなるかは現時点では解りませんが。

独連銀総裁、ECB利上げの終点は明確でない-ジャクソンホール
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-26/RH8CQET0AFB601

欧州の場合、尋常じゃないガス価格上昇もあって
景気への打撃も深刻ですし・・・。

先週ガス価格上昇は加速し続けて最高値更新。
8/31からロシアは欧州向けガスパイプラインノルドストリームの
点検修理を口実にガス供給をストップします。

ロシアはすでに欧州向けガス供給を最大供給時比で20%にまで
減らしていますが、これを3日間ゼロにする予定ですが
供給を絞った分、余剰となったガスは燃やされているみたい・・・

売り先失い焼却処分?一日で約14億円分とも…露の天然ガス 独ではビール価格高騰
https://news.yahoo.co.jp/articles/c41a2994a76588545ceba6cfd2bbeae08a9865f8

1日あたり14億円分ものガスをただただ燃やしちゃうって、、、

グローバリゼーションの終焉、デフレの終焉を象徴するような話題ですが
例えばこんなニュースも。

3・オーストラリア LNG輸出規制を検討

オーストラリア LNG輸出規制を検討 最大輸出先の日本に影響は
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220828/k10013791431000.html

まだ決定ではありませんが、、、、
オーストラリアも自国の安定供給が重用ということです。
オーストラリア資源相「国民のためのガスの確保も重要」

日本にとってオーストラリアはLNGの最大の輸入相手国で
輸入量のおよそ4割を依存しています。
▽オーストラリア 37.2%、
▽マレーシア 13.7%、
▽カタール 11.9%
▽ロシア 8.4%、
▽アメリカ 8.1%

ジェトロは
「各国が入手できる天然ガスの量が減り、価格の上昇につながる可能性がある」
としていますが、世界へ輸出されるLNGの供給量が減るのですからそうなりますね。

そうなれば、益々日本は高いエネルギーを輸入せざるを得ないということで
円安がさらに進む要因となってきます。

あ、ロシアからのガス供給が減ってLNG輸入を増やしている
欧州にとっても同じことでこれはユーロ安要因でもありますね。

米国は中間選挙に向けてガソリン価格が上がらぬよう
精製業者に圧力をかけようと。。。。

U.S. energy secretary urges refiners not to increase fuel exports
https://www.reuters.com/business/energy/us-energy-secretary-urges-refiners-not-increase-fuel-exports-2022-08-27/
米エネルギー長官は国内の石油精製業者に対し、
ガソリンやディーゼルなどの燃料の輸出をこれ以上増やさないよう促し、
工場が在庫を増やさない場合はバイデン政権が対策を検討する必要がある
かもしれないとも付け加えた。

国内の原油生産が増加し世界の燃料需要が回復を続ける中、
米国の製油所は今月、石油製品の輸出を増やしている。

製油所側は、禁止すれば国内市場が燃料であふれかえり、
一部の工場が減産に追い込まれ、供給が減少して
価格上昇圧力がかかる可能性があると指摘している。

これ、バイデン政権の支持率が大事、ということで
企業の立場に立っていないので、話はちょっと異なりますけど。
まあ、自国のことで頭がいっぱいという意味では同じ。

つまりいつどのような形で資源供給が絶たれるかわからない時代になってきた。
岸田政権の原子力再稼働・新設への明言は急務でしたし、英断といえるでしょう。

しかしながら足元の基調が円安で変わらない根底にあるのが
日本だけが(中国は別ね)主要国で緩和姿勢を貫いているということもあって
ジャクソンホール会合で黒田総裁は改めてそのスタンス継続を表明。

4・黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない
-ジャクソンホール
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-27/RHAL50DWLU6801
「日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるものだ」
「日銀は金融緩和策を維持する必要がある」
「日本のインフレ率、年内は2%~3%に近づく可能性があるが、
 来年には1.5%に向けて再び減速する」と予想
 
というわけで、FXってトレードの基本戦略は
リスク警戒が強くなければ円売り継続ですね。

今週も重要な経済イベントが多くあります。

※※今週の予定※※

30(火)
●7月失業率・有効求人倍率(8:30)

●米 6月 FHFA 住宅価格指数(22:00)
●米 6月 S&P コアロジック CS 住宅価格指数(22:00)
●米 8月 CB 消費者信頼感指数(23:00)
●米 7月 JOLT 求人件数(23:00) ◆予想1,047.5万人:6月1,069.8万人

31(水)
●7月鉱工業生産(8:50)
●7月商業動態統計(8:50)
●8月消費動向調査(14:00)
●中国 8月コンポジット PMI(10:30)
●中国 8月製造業 PMI(10:30) ◆予想49.3(7月49.0)
●中国 8月非製造業 PMI(10:30)◆予想52.2(7月53.8)

●米 8月 ADP 雇用統計(21:15)◆NFP予想+30.0万人(7月+52.8万人)
               失業率予想3.5%(7月3.5%) 
9/1(木)
●4-6月期法人企業統計(8:50)
●8月自動車販売台数(14:00)
●中国 8月 Caixin 製造業 PMI(10:45)
●ユーロ圏 7月失業率(18:00)
●米 8月 ISM 製造業景況指数(23:00)

2(金)
●8月マネタリーベース(8:50)
●米 8月雇用統計(21:30)
●米 7月製造業受注(23:00)

ポジションですが、ECBの大幅利上げ観測が強まったことで
ユーロが上昇してきたこともあり
ユーロドルショートをパウエル議長会見前に一旦手仕舞いました。
買い戻しコスト 1.0041ドル

ドル円 136.05円L
NZドル0.6375ドルS は継続したまま。 
ユーロは再度売り直そうと思いますがちょっと様子をみます。

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