2023年2月13日月曜日

 2/14に国会提示、ってスケジュールだからと油断してたら
またしても日経新聞が素っ破抜きました。
日銀執行部人事、一部メディアにだけ漏れて、スクープと言う形で
市場がそれを織り込むということについては
疑問がないでもないですが、ほぼ確定なのでしょう、という記事でしたね。

■日銀新総裁に植田和男氏を起用へ 初の学者、元審議委員
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB106UI0Q3A210C2000000/

植田和男氏(経済学者:戦後初の経済学者出身となるか)
1998年4月~7年間日銀審議委員
審議委員当時は「おおむねハト派的だった」印象

14日の人事案提示後、衆参両院の議院運営委員会で
正副総裁候補者から金融政策に関する所信を聴取して質疑する予定。
衆院議運委では24日に実施する見通し。

この記事が出た直後はドル円相場、日経平均先物が急落しましたが
植田氏は10日夜、記者団に対して現在の日銀の金融政策は適切として
「現状では金融緩和の継続が必要だ」と発言し、
早期正常化への警戒感は後退しています。
よって為替も株価インデックスも行ってこい。
記事が出る前の水準を回復して先週の取引を終えています。

■異次元緩和を「普通の緩和」へ 植田和男氏、慎重に検討
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1202P0S3A210C2000000/

海外市場でドル円や日本株を一段と売り込む動きもありませんでした。
サマーズ元財務長官らも好意的にコメントしていますが
それにしても日本のバーナンキとは。
バーナンキ議長は22年のノーベル経済学賞を受賞しています。
植田氏の評価が非常に高いことが伺えますね。

■植田氏は「日本のバーナンキ」、決断力もある-サマーズ氏が評価
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-11/RPWEDET0AFB701

・バーナンキ元FRB議長とほぼ同じ時期に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、
 論文の指導者も同じだった
・バーナンキ氏、サマーズ氏、ECB理事会ドラギ前総裁は FRB副議長やイスラエル中銀総裁を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏の教え子
 
バーナンキ氏というとヘリコプターベンの異名が。
(デフレを解消するには、ヘリコプターから紙幣をばらまくような
大胆な金融緩和策が有効、との見解を示したことに由来)

緩和的政策を支持しているような印象ですが実際はどんな方なんでしょうか。
記事を色々拾ってみました。

■日銀総裁指名の植田氏は実務知る理論家、政権は複雑化した運営託す
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-02-10/RPQTMZT0AFB401
・速水総裁の下で導入されたゼロ金利政策や量的緩和政策の理論的支柱となった。
 2000年8月のゼロ金利政策の解除では反対票を投じている
 
・「0.5%の公定歩合引き下げを巡る議論が中心となる中、量的緩和政策の導入の可能性に言及し、「正しいかどうかは自信がないが、検討の余地はあると思っているし、経済実態がこれから先、下の方に向かって突っ込むという兆しが見えた場合には有効な手段の一つである」

■「拙速な引き締め避けよ」 語録で読む植田和男氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB107UF0Q3A210C2000000/
▼「金利引き上げを急ぐことは、経済やインフレ率にマイナスの影響を及ぼし、中長期的に十分な幅の金利引き上げを実現するという目標の実現を阻害する」(2022年7月、「経済教室」への寄稿)

▼「難しいのは、長期金利コントロールは微調整に向かない仕組みだという点である。金利上限を小幅に引き上げれば、次の引き上げが予想されて一段と大量の国債売りを招く可能性がある」(同上)

▼「多くの人の予想を超えて長期化した異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要だろう」(同上)

▼「日本における持続的な2%インフレ達成への道のりはまだ遠い」(同上)

▼「緩和効果が十分に発揮されなかった点が大幅な実質円安の背景にあり、円の購買力は下がった」(22年5月、インタビュー「複眼」)

▼「(金融政策の効果が出なかったのは)様々な構造問題により日本の成長力が下がり、(景気を熱しも冷やしもしない)中立金利が低下したためだ」(同上)

▼「本来誘導対象は10年より短い金利にして、10年債利回りは自由に変動させるのが日銀の考え方には合うのではないか」(21年4月、複眼)

▼「高水準かつ増大を続ける政府債務残高の弊害の一つは、経済が金利上昇に脆弱なことだ」(20年12月、経済教室)

▼「日銀はすぐに実行できて効果の大きい政策をほとんど持ち合わせていない。だから金融緩1和だけでなく、同時に財政出動で支えてもらうのが一番良い選択肢ではないか」(19年10月、インタビュー「創論」)

▼「債券市場の価格発見機能は大きく低下するとともに、利ざやの薄くなった銀行、運用対象が限定的となった機関投資家などによる金融仲介機能には無視できない負の影響が及んでいる」(18年8月、経済教室)

すぐさま出口戦略に着手するということはなさそうですね。

【初めて金融政策にフォワードガイダンスを導入した植田氏】

2001年3月19日の、日銀会合で導入された
時間軸政策、今でいう「フォワードガイダンス(将来の政策指針)」は
この時、日銀審議委員だった植田和男氏が提唱したものだそうです。

【2001年3月の金融緩和】
・操作目標を「金利」から「量」に
・消費者物価指数上昇率が安定的に0%以上になるまで緩和継続
・結果、短期金利はゼロ近辺で推移すると予想
・長期国債の買い入れを増額

物価が上昇基調になるまで量的緩和を続けるとコミットすることで、
短期~中長期の金利に低下圧力をかけて、経済を活性化させるということ。

このように中央銀行が将来の金融政策の方針を明言し
市場参加者の予想や期待に働きかけることでより金融政策の効果を促すのが
「フォワードガイダンス」ですが、
この時(2001年)初めて日銀が導入しました。

その7年余りの後、リーマンショック後に
FRBがフォワードガイダンスを採り入れており、
実は米国に先駆けて日本が導入しいたんですね。

また東大日次物価指数(現日経CPI now)プロジェクトを事業化して立ち上げた
ナウキャスト事業でも技術顧問を務めていたようです。
POSデーターから顧客の消費行動をデータ化、物価動向を追い続ける
ナウキャストの顧問だったということは、物価動向にも明るい?

現在のところ、この植田氏への評価は悪くありませんので
マーケットもそれほど荒れることはなさそうです。

YCC修正とかマイナス金利解除などの政策変更は
すぐにはやらないと見られますが
フォワードガイダンスを修正することで
出口の時期を市場に織り込ませようとする可能性はあるでしょうか。
それも就任後の話ですね。

そして副総裁人事について。

■氷見野良三氏・内田真一氏 日銀副総裁候補の横顔
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB092SJ0Z00C23A2000000/
・内田真一氏は金融政策を企画・立案する企画局が長い
 量的・質的金融緩和政策の導入や強化に関わった「政策参謀」
・マイナス金利政策やYCC導入時の実務を取り仕切った

内田真一氏は黒田総裁の量的緩和(QE)を実務面で支えた存在ということで
これを巻き戻す必要が生じた時には極めて有用だとの声も。

■選び抜いた一言に説得力 新金融庁長官の氷見野良三氏
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61493740U0A710C2EE9000/
・2004年に改定された主要国の銀行を対象にした
   監督規制「バーゼル2」の交渉で頭角を現した
・海外当局を粘り強く説得し、邦銀が受け入れ可能な条件に持ち込んだ。
・国際交渉術の「十戒」のひとつが「主張はワンフレーズに要約する」

****************************************************
日銀執行部人事はすでに金曜に市場に織り込まれたような印象です。
名前の上がったお三方に関しても
就任前から不用意な発言で円高を演出させるようなことはしないでしょうから
ひとまず顔が見えた、という不透明感払拭は円高圧力払拭に繋がり
下値が固くなるのではないか、と考えています。

となると、注目は14日の米国CPI消費者物価指数ですね。

前回12月の米CPIは前年同月比+6.5%。11月の7.1%からは大きく鈍化しています。
同コア指数も+5.7%で11月6.0%から鈍化。
ピークは22年6月の+9.1%(総合)6ヶ月連続での鈍化です。

そして今回の1月CPI予想は 前年比+6.2% 前月の+6.5%からさらに鈍化予想。
コア指数は+5.4%の予想。前月+5.7%からこちらも鈍化予想です。

ただし、気になるのが中古車価格。
自動車オークションを手がけるマンハイムによると
1月の米中古車平均価格は前月比で2.5%上昇。
前月比では2カ月連続の上昇となっています。
米レンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールティングスによると、
中古車オークションと店頭販売の両方で過去5週間に価格が急上昇しているとのこと。

中古車価格は消費者物価指数(CPI)コア指数の4.5%を占める重要要素。
一部にインフレの再燃が警戒されていますので
予想どおりにインフレが鈍化するかどうかわかりませんよ。

米金利は上昇基調にあり、どうも一旦底打ちしたようにも見えますし。。。

※米国債利回り一覧

週明けからドルロング狙いです。

************今週の予定***********************
2/13(月)
・NISA の日

14(火)
・10-12月期 GDP 改定値(8:50)
・日銀総裁・副総裁人事案、14日に国会提示(午前11時)
・日銀、5年物の共通担保資金供給オペレーションを実施
・NZインフレ予想(第1四半期)
・米 1月消費者物価指数(22:30)
・ダラス連銀総裁、NY連銀総裁、フィラデルフィア連銀総裁、講演
・OPEC月報

15(水)
・12月第三次産業活動指数(13:30)
・1月訪日外客数(16:15)
・ロウ豪中銀総裁、半期に1度の議会証言
・英消費者物価指数(1月)
・米 2月 NY 連銀製造業景気指数(22:30)
・米 1月小売売上高(22:30)
・米 1月鉱工業生産・設備稼働率(23:15)
・米 2月 NAHB 住宅市場指数(16日 0:00)
・米 12月対米証券投資(16日 0:00)

16(木)
・12月機械受注(8:50)
・1月貿易統計(8:50)
・1月首都圏新規マンション発売(11:00)
・豪雇用統計(1月)
・中国新築住宅価格(1月)
・米 1月住宅着工件数(22:30)
・米 1月建設許可件数(22:30)
・米 1月生産者物価指数(22:30)
・米 2月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(22:30)
・米 2月 NY 連銀ビジネスリーダーズサーベイ(22:30)
・クックFRB理事、セントルイス連銀総裁、クリーブランド連銀総裁、講演

17(金)
・米 1月輸出入物価(22:30)
・ボウマンFRB理事、クリーブランド連銀総裁、リッチモンド連銀総裁、講演

日中のつぶやきはこちらで
ひろこのTwitter


いつもご覧いただきありがとうございます。
人気ブログランキングへ




※本レポートにて豊トラスティ証券株式会社が提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものです。したがって銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、弊社の重要事項説明を十分にお読みいただき投資家ご自身の判断でなさるようにお願いします。

※また、本ブログ内にて提供される情報は豊トラスティ証券株式会社が信頼できると判断した情報源をもとに弊社が作成したものですが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、豊トラスティ証券は保証せず、また、いかなる責任を持つものではありません。

※ブログ内容についてその表現や記述、データその他に関しましては、著作権法などの法令により保護されており、個人の方の私的使用目的以外での使用や他人への譲渡、販売コピーは認められていません(法律による例外規定は除きます。)。

以上の点をご了承の上、本ブログをご利用下さい。

運営:豊トラスティ証券株式会社