2023年5月7日日曜日

 先週は日本がGWとなる中、米FOMC,雇用統計、RBAにECB理事会と
イベント盛りだくさんでしたが、今週からの焦点は米国の債務上限問題です。
先週の流れを振り返りつつ今週の注目は~

【5/3 FOMC】


5月FOMC声明文で据え置き示唆も、パウエル議長は利下げに引き続き否定的
https://agora-web.jp/archives/230504214414.html

【声明文では「利上げ打ち止め示唆」】
・下記文言削除。
「いく分の追加的な引き締め(some additional policy firming)が物価を2%へ回帰させるため、十分引き締め寄りな金融政策の姿勢を実現すべく、適切な可能性があると予想する」

・追加された文言
「物価を2%に戻すべく、追加の引き締めがどの程度適切となる可能性があるかを判断する際、金融引き締めの累積効果、金融政策が経済活動や物価に影響を与えるラグ、経済・金融情勢を考慮する」

【パウエル議長会見、年内利下げ否定】
・「年内の利下げは適切ではない」と年内利下げの可能性を否定。

【パウエルFRB議長の記者会見】
・「銀行破綻が続いたことに後悔はないか?}
➡政策ミス認める
フランク・シナトラの名曲「My way」の歌詞になぞらえ
「我々が間違いを犯したことは十分に認識している」

・パウエル議長が「ファーストリパブリック銀行の処理で
銀行懸念は片付いた」と答えるも、その直後に
パックウェスト・バンコープ(PACW)が身売りなどの経営再検索を検討している
とブルームバーグが報じたことでアフター取引でPACW株が50%も下落するという
災難に見舞われたりもしましたが、、、💦

【銀行破綻危機の連鎖】

■パックウェスト、四半期配当1セントに減額-銀行セクター混乱に言及
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-06/RU7ZPTDWX2PS01?srnd=cojp-v2

ただし、週末にかけて米銀行株は大きく上昇しています。
これはSECが動くとの観測でショートカバーが起きたと思われます。

■パックウェスト株88%高、米地銀株が急反発-売られ過ぎとの見方で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-05/RU6VUHT0AFB50106+0

■米地銀株が乱高下 当局、空売り動向注視
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN053QK0V00C23A5000000/
・投機筋による空売りが勢いを増している
・銀行の業界団体は米証券取引委員会(SEC)に調査を求める

SECゲンスラー氏
「あらゆる形態の不正行為を特定し、訴追に重点を置く」

PACWの株価は4日木曜には2.48ドルまで売り込まれており、
ここからの下落を狙っても下値余地は少ないですし
週末にSECが空売り筋にタカ派的コメントでも出そうものなら
相場の地合いが一変するリスクもある、というわけで
週末の金曜日に猛烈に買い戻し(ショートカバー)が起きたというわけです。

SECが動けば空売り筋が大人しくなる➡銀行株急落リスク後退
となる可能性もあるとは思います。
かと言って銀行株に買い場到来というわけではありません。
米国商業銀行預金残高はものすごい勢いで減少しています。
銀行から資金が流出しているのです。

米国商業銀行の預金残高は
1934年以来で最大の資金逃避
https://twitter.com/saxena_puru/status/1654358815951974400
銀行セクターから流失したマネーはどこへ?
MMF残高がご覧の急増。
5月3日週時点で前週比472億ドル増の5.3兆ドル(過去最高)

※MMF=国債やレポ、CPなど安全性の高い運用を行う投資信託
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202204/202204g.pdf

「MMFは短期国債の運用でありこれ以上に信頼のおけるアセットは無い」
https://twitter.com/zerohedge/status/1653449221356367872
米商業銀行の銀行預金金利平均が現在0.3%程度とされる中
MMFに資金が集まるのは自然なこと。
短期債の利回りは4%前後です。

逆に言うと、これらは今後リスクテイク相場が来れば
株式市場に向かう可能性がある「待機資金」でもあります。
市場に安心感が広がるフェーズが来ればこの資金は
雪崩を打って株式市場に戻ってくると考えれば
ここからあまり弱気にもなれません。

また、まだ大きく崩れていない米株市場は底堅いようにも見えますが
足元では、債務上限問題を材料に売り込まれるリスクがあるため
注意が必要な時期にあると思っています。
債務上限問題に関しては下記に考察を。
その前に、ECB~米雇用統計を振り返っておきます。

【5/4 ECB理事会】

【ECB政策金利 0.25%利上げ】
・一部に0.5%利上げ観測がありましたが0.25%利上げにとどまる
・ラガルド総裁
 「利上げが必要であること、一時停止しないこと、
         この2点は非常に明確だと全員が合意」
https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-lagarde-idJPKBN2WV1B3
利上げは想定されたものだったため
どちらかというと「材料出尽くし」でユーロ売りとなりましたが
しかし、今後も利上げを継続するスタンスを示しており
大きくユーロを売り込む向きは少ないようです。

■ECBは7月までに2回の0.25ポイント利上げ、大半の金融機関が予測
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-05/RU6I1JT0AFB401
・GS/モルガンS予想 0.25%✕2回➡3.75%へ
・ING/コメルツ予想 0.25%✕1回➡3.5%へ
・ドイツ銀行予想 0.25%✕3回➡4%へ

【雇用統計~文句なしに強かった?!】

■FRBが高めの金利を長期維持する可能性高まる-強い雇用統計で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-05/RU6UJFT1UM0X0
・非農業部門雇用者数(NFP)+25.3万(予想+18.5万 前回23.6←16.5万に下方修正)
・失業率:1969年以来の低水準となる3.4%に低下(予想3.6% 前回3.5%)
・平均時給:前月比+0.5%(前月+0.3% 前回+0.3%)
      $33.36(4500円)
・25-54歳の労働参加率は83.3%に上昇、2008年以来の高水準

※過去2カ月の下方修正は14.9万人にも上るため、
 手放しで強いと喜べないとの指摘も。

しかし、僅かではありますが6月FOMCでの利上げを織り込む動きも。
Fedウォッチは 8.5%程度6月利上げを織り込んでいます。
そして、9月から利下げを織り込む。。。。

■ブラード総裁、利上げの必要性示唆-「有意なインフレ低下」確認したい
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-05/RU74EXT0G1KW01
・インフレ率を下げるには政策金利をさらに引き上げなくてはならないだろう
・これから出てくるデーター次第

先週、ドルに方向感は出ませんでした。
ドルインデックスは長らく同じ水準でもみ合っているだけです。
しかし、豪ドルやNZドル、カナダドルなど
資源関連通貨の戻りが大きいのが気になります。
※通貨インデックス一覧

豪州が先週サプライズで利上げを実施したことが影響しているでしょうか。

【5/2 RBA利上げ再開】
・政策金利 0.25%利上げ➡3.85%へ サプライズ!
・ロウ総裁
「CPI、7%は依然として高すぎ、インフレ目標に戻るにはしばらく時間がかかる」
「目的を達成するために、さらなる引き締めが必要になる場合がある」

2022年5月以降10会合連続という前例のないペースで利上げしていましたが
4月会合で利上げを見送っていました。今回も利上げ予想はほぼありませんでした。

(豪1-3月期CPIは、前年比で+7.0%、10-12月期の+7.8%からは大幅に鈍化、
 RBAが重要視するトリム平均値は前年比+6.6%で、前期+6.9%から減速していた)

そして5/5に発表された四半期金融報告ではインフレリスクが上向きである
との見解が示され、追加利上げの可能性が出てきました。

■豪中銀、物価警戒 生産性低迷や移民急増の影響懸念=四半期報告
https://jp.reuters.com/article/australia-rba-banking-idJPKBN2WW06Z
「CPI予想、 2023年末4.5%、24年末3.2%、2025年半ば3.0%」
「GDP成長率予想、2023年末1.2%、2024年末1.7%、2025年半ば2.1%」

弱かった豪ドルにショートカバーが入った1週間でした。
キウイドルはこの動きに連れ高となった可能性が大きいですが、
カナダドルの上昇は週末に出てきた
カナダの雇用統計の結果受けた上げが大きかったか。

■カナダ雇用統計
新規雇用者数 +4.14万(予想+2.0万 前回+3.47万)
失業率    5.0%(予想5.1% 前回5.0%)

・マックレム・カナダ銀行(中央銀行、BOC)総裁 
「歴史の教訓は利上げに中途半端な態度をとってはならず、
   早すぎる利下げはすべきではない」

それから原油が大きく反発していることも
カナダドルのショートカバーにつながったようですね。

※WTI原油 投機筋による売りで崩れているだけなのかも・・・?
今週以降、豪ドルやカナダなど資源関連通貨の上昇が継続するか?
それには、ドルの方向性も重要ですが、
債務上限問題はドル売りにつながるかどうか。
この点が重要となってきます。

【米債務上限問題】

米連邦政府が国債発行などで借金できる政府債務残高上限枠に1月19日時点で到達。
以降、公務員退職・障害基金への追加投資の停止や償還、
郵政公社退職者医療給付基金への追加投資の停止などの特別措置で
資金をやりくりして繋いでいる状態にあります。

※米議会は2021年12月に、政府の法定債務上限を
約31兆4,000億ドルに引き上げています。
それから2年が経過し、政府債務がこの上限にまで達してしまいました。

資金が枯渇し米国債が発行できないとなれば、
米国債はデフォルト(債務不履行)に陥ることになります。

オバマ政権下の2011年8月、債務上限引き上げが揉めに揉めました。
議会で債務上限引き上げに合意できたのですが
民間格付け会社が米国債の格下げを発表してことで
金融市場がパニック売りに見舞われました。
S&P500指数は7月下旬~8月中旬の間に約18%下落しています。

デフォルトさせないためには
①債務上限を適用停止や暫定延長する
②債務残高枠を拡大する
などの措置をとるなど議会の合意が必要ですが、
来年の大統領選挙を前に、ねじれ議会でこれがすんなり決まるわけがない、
ということで今年は殊の外懸念が大きいとされています。

■米債務上限問題、期限まで残された時間わずか-短期措置で乗り切りも
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-03/RU1YRXT0AFB401

・5/1、イエレン財務長官は6/1がリミットとなるリスクに言及。
(特別会計措置による資金繰りがなくなる)

・しかし、危機はもっと早くやってくる?!
➡5/9~5/17までの7日間が重要!!


・G7広島サミットの日程が関係。5/19~21開催。
・5月最後2週間は、メモリアルデーのため上下院が交互に休会予定

よって、バイデン米大統領と上下両院の議員が同時にワシントンにいる時期は
5/9~5/17、この1週間しかないのです。

議会が「メモリアルデー」の休会を取りやめ、
バイデン氏がG7広島サミットへの出席を見送る可能性も?!
という観測まで出てきましたが、
バイデン政権としてはそうならないために、
まずは5/17のリミットに向けてなんとか話し合いを進めるものと
思われますが、民主党だけでまとまる話ではないので
今週以降は、この話がまとまらないという内容の報道が出れば
株が売られるマーケットの混乱が出てくるやもしれません。

ヘッドラインリスクが大きく、ボラティリティが高まると思われます。

共和党は簡単に合意しない姿勢を表明。
■米共和党上院議員ら、無条件の債務上限引き上げ法案に反対表明-書簡
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-06/RU7ZPTDWX2PS01

■イエレン米財務長官、日本訪問の期間短縮-債務上限問題への対応で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-05/RU72D8T0AFB401

■米を格下げ方向で見直し、債務上限巡り長期リスク=欧州格付け会社
https://jp.reuters.com/article/usa-ratings-scope-ratings-idJPKBN2WX03N?il=0

過去の債務上限問題では資金繰り枯渇で
米政府機関が閉鎖されたことが何度かありました。
2013年、2018年、2018年~2019年にかけて
いずれも数週間~数日前からドル売りとなっています。

2011年の格下げのときは、日本の震災があった年でもあり
円高が極まっていた時期でした。格下げが8/5でしたが
日本当局は8/4にドル買い介入を行っていますので参考にならず。

というわけで、ここからは債務上限問題の行方と
この問題がドル売りにつながるか、
そして株式市場の売りにつながるか否かに注目です。

日経CFD28786円ロングは継続。
キウイドル0.6280ドルショートは0.6258ドルで買い戻して手仕舞い。

雇用統計で反発したドル円ですが、債務上限問題が深刻化するようなら
戻り売り狙いか。
あるいはトレンドが明確に出ているポンドドルの買い狙いとか・・・?

NOTE
■バフェット氏、台湾より日本への投資に前向き 米中対立で
https://jp.reuters.com/article/berkshire-buffett-japan-idJPKBN2WY012
20年8月に5%だった伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の
株式保有比率を昨年11月に6%超に引き上げ、先月には7.4%まで引き上げた
他方、台湾積体電路製造(TSMC)の株式を大量に手放している。

私も日本株には強気。

■中国の金保有が6カ月連続で増加、外貨準備高も増える-4月末
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-07/RU9S52DWLU6801?srnd=cojp-v2
・中国は4月に金保有を約8.09トン増やした
・3月までのカ月間に約120トン増加した後、総保有量は約2076トンに達している

この事実も長期にドル下落を連想させるのよね。

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